ヨーロッパでは、職人の社会的地位が高い。例えばドイツでは、「マイスター」の称号を持つ者が、人々から尊敬の眼差しを受ける。職人それぞれの仕事の中で発揮される技術を、誰もが認め、正しく評価される。 このような社会の環境がある…
我々世代の男子が、針を持つ授業を受けたのは、小学校5、6年の時だけである。糸の玉結びや玉止めを覚え、返し縫いの練習を繰り返して、ボタン付けをしたり、ミシンを使って、雑巾を縫ったりもした。バイク呉服屋は、手先がひどく不器用…
蒸しと水元(水洗い)という仕事は、友禅の作業工程の中で最も地味であり、あまり知られてはいない。下絵や糊置き、色挿し、さらには箔・縫、絞りとそれぞれの工程にいる職人達の技は、品物の上に姿が表れる。 加賀友禅は、下絵の図案描…
地方の者にとって、縦横無尽に張り巡らされた東京の地下鉄路線を、熟知して使いこなすことは難しい。知らないうちに、新しい路線や駅が出来ていたり、私鉄との乗り入れが始まっていたりする。 バイク呉服屋が、東京で学生生活を始めたの…
バイク呉服屋にとって、梅雨が一番厄介な季節。なぜならば、雨だとバイクが使えず、仕事に支障を来たすからだ。その上運転中に、予期せぬ天候の急変に遭遇することがあり、そんな時は、家の軒先などで雨宿りを余儀なくさせられる。届けモ…
庭の片隅の紫陽花が、初めて小さな花を咲かせた。家内が、友人から頂いた鉢植えを地植えして、今年で5年目になる。毎年、葉だけは青々として元気に見えたが、花を咲かすことはなかった。剪定をせず、特別に肥料などを与えることもなかっ…
大概のスーツの襟下には、小さな穴が開いている。その名前は、「ラペルホール」または「フラワーホール」。もともとジャケットは、学生服の詰襟のように、襟を立てて着用していたもので、この穴は第一ボタンを止める時に使われていた。 …
蛾の幼虫の一つ、尺取り虫の足は、体の端にしか付いていない。だから、体をU字型に曲げ伸ばさないと、前には進めない。「尺取」という名前は、この虫の歩く姿が、一定の間隔を繋ぎながら、寸法を測っているように見えるからである。 &…
女性は、いつの時代から化粧を始めたのか。赤い顔料で色どられた女性の埴輪などが出土していることから、5~6世紀の古墳時代には、すでに身づくろいがされていたと考えられる。 日本女性の化粧姿を、はっきりと確認させてくれるのは、…
もう10年も経てば、かなりの職種が消えていくそうだ。ITに社会が席巻されていることと相まって、急速な機械の進化、さらにロボット化が、人間から仕事を奪う。 インターネットは、新聞や郵便の役目を完全に奪い、機械の進化は、スー…