バイク呉服屋の忙しい日々

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バイク呉服屋の、加賀友禅グラフィティ・続編

2026.05 05

どうやら、この国の偉いお役人の方々には、日本の伝統文化を愛でたり嗜んだりする心づもりは無いらしい。しかもそれが、日本の文化や芸術を振興したり、文化財を保護する立場にある役所・文化庁のお役人さまだから始末が悪い。

先ごろ文化庁は、国立美術館や博物館などの運営に関して、今後5年の間で、展示事業による自己収入の比率を運営費の65%とする目標を掲げ、それが40%以下の場合には、社会的な役割が果たせていないと判断して、再編もありうるという中期計画を策定した。つまり、自分で稼げない博物館や美術館の面倒は、もう見ないと宣言したのだ。

卑しくも「国立」と名前が付き、貴重な税金から交付金を出している文化機関を、民間のテーマパークのように「自分で稼げ」というのは、どのような了見なのか。文化財を保護したり、収蔵品を集めることは民間では到底難しく、国だからこそできること。それを集客できなければ、潰すぞと脅しをかけるとは、開いた口が塞がらない。文化を守るはずの役所が、率先して「文化財保護はコスパが悪い」と切り捨てている。

 

5か所の国立博物館と3か所の文化財研究所を統括するのは、独立行政法人国立文化財機構。昨年度の決算を見ると、自己収入は162億円余りで運営費の12.6%に過ぎず、75%近くが交付金で賄われていた。この現状を考えれば、運営費の3分の2を入館料等の自己収入で稼ぐことなど、到底難しい。穿った見方をするならば、5年後に統廃合の口実とするために、こんな無理な目標を設定したとも考えたくなる。いかにも、狡猾な官僚のやりそうなことである。

貴重な文化財を集め、それを丁重に保管修理しながら、時には展示をして来館者の目を楽しませる。美術館や博物館は、人々の心を潤わせるところ。そう国民が位置付けているからこそ、税金が使われることを良しとする。国の財政が逼迫していることは重々承知しているが、日本人のアイデンティティに関わる伝統や文化を理解するために、象徴的な役割を果たしている場所を、単純に「お金の問題」で隅に追いやると言うのは、とてもやるせなく、やりきれない気持ちになる。

 

かように博物館や美術館を取り巻く環境は、厳しさを増しているものの、この連休中にはそんな施設でも多くの来館者を迎えて、賑わっていることだろう。そこでバイク呉服屋も、5月恒例のオムニバス・まとめ画像をお送りすることにしよう。

今回は、2017年の5月5日の稿・バイク呉服屋の加賀友禅グラフィティの続編。この9年の間でブログ稿の中で取り上げた品物と、未掲載の品物を含めて28点ほどをご紹介する。美術館の絵画を見るように、作品をご覧頂ければと思う。

 

(水色地 流水に御所解模様 訪問着・宮野勇造 2018.1.22)

 

(九谷絵皿模様 黒留袖・奥原一就 2018.9.10)

 

(薄桜色裾暈し 流水に小桜秋草模様 付下げ・大久保謙一 2018.9.21)

 

(薄クリーム色 蔓菊にアザミ模様 訪問着・上田外茂治 2018.10.14)

 

(藤袴色 春秋花に鳥模様 色留袖・浅野冨治男 2019.6.2)

 

(松皮菱に松・梅・菊模様 黒留袖・白坂幸蔵 2019.10.30)

 

(ベージュピンク市松取 四季花車模様 振袖・井波勝男 2019.12.11)

 

(藤紫色裾暈し 秋草模様 訪問着・小田美知代 2020.9.23)

 

(柳鼠色裾暈し 蝋梅に菊模様 訪問着・金丸明広 2021.2.21)

 

(薄水色 ユウスゲ模様 訪問着・高平良隆 2021.5.13)

 

(鳶色 道長取青海波に春秋花模様 色留袖・柿本一郎 2022.10.16)

 

(灰桜色 ヤマボウシ模様 訪問着・柿本一郎 2022.10.16)

 

(城郭に茶屋辻 四季花模様 黒留袖・中井節子 2023.6.12)

 

(空色 四季花の丸に七宝模様 色留袖・能川光陽 2023.11.19)

 

(白鼠色裾暈し 秋草に花筏模様 色留袖・松本節子 2024.6.4)

 

(クリーム色 秋草模様 訪問着・由水煌人 2024.9.15)

 

(薄鼠色 菊尽くし模様 訪問着・高平良隆 2024.9.15)

 

(白茶色裾暈し 山水御所解模様 色留袖・能川光陽 2025.7.6)

以上18点の加賀友禅は、2018年以降にブログ稿の中で取り上げた品物。各々の作品に稿の日付けを記しておくので、詳しい内容はそちらでご覧頂ければ有難い。それではこれから、未掲載の品物を何点かご紹介することにしよう。

 

(クリーム色裾暈し ナナカマド模様 訪問着・太田昌伸)

 

(クリーム色 皐月花模様 訪問着・森田耕三)

 

(薄鼠色 キブシ模様 訪問着・松井眞夫)

 

(水色裾暈し 木蓮模様 訪問着・宮野勇造)

 

(白鼠色 オダマキに未央柳模様 訪問着・上田修壮)

 

(薄水色暈し 小牡丹模様 訪問着・宮本由美子)

 

(鼠色裾暈し 椿模様 付下げ・成竹登茂男)

 

(青黛色 枝垂れ桜・楓・菊模様 訪問着・野崎徳勝)

 

(露芝に福良雀模様 黒留袖・村田幸司)

 

(四季花遠山に花筏模様 黒留袖・押田正義)

未公開の作品10点をご覧頂いたが、この中の何点かは、いずれブログ稿の中で個別に取り上げる予定にしている。詳細な内容説明については、その機会までお待ち頂こう。

一口に加賀友禅と言っても、こうして様々な作家の作品を揃えて並べてみると、各々の個性がその図案に表れている。そしてモチーフを見つめる視点、意匠としての切り取り方にも違いがみられる。季節を代表するポピュラーな花を選ぶ作家があれば、名も知らぬ野花に目を向ける作家もいる。それぞれが、それぞれの感性に従って品物を創る。きっと作家たちの誰もが、自分の作品に袖を通す装い手のことを想像しつつ、筆を進めたに違いない。

今回作品をご覧頂いた皆様が、そんな加賀の作家たちの創作にかける思いを、感じ取って頂けたなら嬉しい。昭和、平成、令和と時代が進むにつれて、需要は急速に少なくなり、作り手にとって厳しい時代を迎えている。そんな逆風の中にあっても、しっかりと加賀友禅の伝統を受け継いで、作品を描き続けている人たちの仕事を、これからも伝えていきたいと思う。

 

令和7年度の国家予算は、総額で117兆6059億円。そのうち、文部科学省関連は5兆4029億円、さらにその中で、文化振興を担う文化庁の予算は1063億円。この金額を予算全体から見れば僅か0.1%に過ぎず、前年度からたった1億円しか増えていません。一方防衛費は8兆7005億円となり、前年から9.4%と大幅に伸びて、過去最高額に達しました。

公的な博物館や美術館の中には、光熱費の値上がりで空調費が捻出できない施設や、収納スペースが足りずに、収蔵品の廃棄を検討するところも出始めています。一昨年、資金不足に直面した国立科学博物館が、標本維持のためにクラウドファンディングを実施したことは、多くの人の耳目を集めましたが、各施設の困窮ぶりは目を覆うばかりで、この先の運営が本当に懸念されています。

 

そんな中で出された、今回の「各施設の運営費は、自分で稼げ」ですので、これはもう、国が「文化は守らない、守れない」と宣言したようなもので、お先は真っ暗です。

強く豊かな国よりも、伝統文化や多様性を尊重する優しい国になって欲しい、と私は思うのですが、それは間違っていることなのでしょうか。今日も、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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このブログに掲載されている品物は、全て、現在当店が扱っているものか、以前当店で扱ったものです。

松木 茂」プロフィール

呉服屋の仕事は時代に逆行している仕事だと思う。
利便性や効率や利潤優先を考えていたら本質を見失うことが多すぎるからだ。
手間をかけて作った品物をおすすめして、世代を越えて長く使って頂く。一点の品に20年も30年も関って、その都度手を入れて直して行く。これが基本なのだろう。
一人のお客様、一つの品物にゆっくり向き合いあわてず、丁寧に、時間をかけての「スローワーク」そんな毎日を少しずつ書いていこうと思っています。

ご感想・ご要望はこちらから e-mail : matsuki-gofuku@mx6.nns.ne.jp

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