「皆様、お手を拝借」の声で、手締めが始まる。「シャシャシャン、シャシャシャン、シャシャシャン、シャン」と三三一拍子を三回繰返し、最後は拍手で終える。手締めには、一回だけの一本締めと、三回の三本締めがあるが、地方ごとに様式…
今日は、冬至。一年のうちで、最も昼が短く、最も夜が長い。今は、夜が明けるのが7時少し前で、夕方4時半を過ぎるともう陽が落ちる。年の瀬が迫り、ただでさえ仕事に追われているが、陽が短いことで、なお急かされているような気がする…
呉服屋も、和裁士も、生地を裁断することは、「布を切る」ではなく、「布を裁つ」と言う。和裁士が仕事の中で、もっとも神経を使うのが、この裁ちを入れる時である。 和裁士は、呉服屋が採ったお客様の寸法に合うように、間違いなく裁ち…
毎年暮れになると、その年の流行語大賞が発表されるが、今年は「忖度」と「インスタ映え」だと言う。 忖度とは、相手の気持ちを推し量ることなので、別に悪い意味を持つ語彙ではないのだが、今年流行するきっかけとなった経緯を考えると…
うちの奥さんは、毎年今頃大根を漬ける。糠と一緒に、鷹の爪や乾燥させた柿の皮を混ぜ、そこに塩とカルピスを入れる。漬物にカルピスとは、何とも不思議な取り合わせだが、使うことにより、発酵を促進すると同時に、甘酸っぱい独特の風味…
近頃、ほとんどテレビを付けない。以前ならば、ニュース情報番組くらいは見ていたのだが、それもしない。日々報道される世間のことなど、聞いても面白くないことばかりで、いっそ何も知らない方が良い。 「知らぬが仏」を決め込めば、社…
毎年、11月も半ばを過ぎると、そろそろクリスマスのことが気になりだす。すでに街では、イルミネーションが煌き、赤と緑のクリスマスカラーが、目立っている。この、年末最大のイベントほど、人それぞれの状況で、過ごし方が変わるよう…
船で海を越えなければ辿り着けない場所には、独特の旅情を感じる。デッキで海風に体を委ねながら、まだ見ぬ土地に思いを馳せると、改めて遠く旅に出ていることを実感する。そんな感傷に浸れるのも、船旅ならではである。 つい30年前ま…
日頃、キモノを良く着用される方でも、使い道に苦慮する品物がある。この方々の多くは、母や祖母から譲り受けた古いモノでも、汚れを落とし、寸法を直しながら、大切に扱い続けているような、いわば「品物を無駄にしない」人たちである。…
相続の手続きとは、何と厄介なものか。母親が遺した財産など、たかが知れているというのに、本人や相続人の戸籍謄本や印鑑証明、銀行の証明等々、様々な書類を準備しなければならない。 父や妹は、最初から手続きを面倒がっていたので、…