霜月も終わりに近づき、すっかり日暮れが早くなった。このところ、午後3時を過ぎれば日は傾き始め、4時半にはもう暗くなる。日の長い6月だと、7時を過ぎても明るさが残るので、今と昼の長さは2時間半も差がある。日暮れに追い立てら…
現代では、ある事象について秀でた知見を持っている研究者や知識人のことを、有職者(ゆうしきしゃ)と呼んでいる。政府や省庁が重要な事案を検討する時には、この人々を招いて会議を開き、提言を求めることがよくある。感心するのは、ど…
立冬を過ぎて、このところ晴天が続いている。日本列島の西にある大陸上に高気圧があり、東の千島列島付近に低気圧が位置するという、いわゆる「西高東低」の気圧配置になってくると、秋深く冬近しを思わせる。こうなると、太平洋側の地域…
「体裁を整える」とは、外見を気にするとか、見映えを良くするという意味だが、呉服屋における体裁とは何かを考えた時、それはお客様への品物の見せ方や、誂えた品物の納め方に対する気遣いに当たるように思う。清潔で居心地の良い店舗は…
人それぞれには好む色があり、それによって行動や心のあり様が判る。色彩心理学とは、色を使って人間の心を研究する学問。色は各々に特徴があり、そこには様々な意味合いを含んでいる。だから色からは、性格や特質を知ることが出来るとい…
多くの日本人にとって、信仰の対象となっているのは神と仏。中には、キリスト教や他の新しい宗教と言う方も居られようが、神道と仏教が、日本人の心に息づいてきたのは、その歴史的経緯を考えても間違いないだろう。そして実はこの二つ、…
つい、一週間前は冷房を使っていたというのに、ここ数日は、朝晩ストーブが欲しくなるような冷え込み。街を行く人の服装も、半袖から一足飛びにコートを着込む姿に変わっている。和装ならば、単衣から袷の帯付きを通り越して、すぐに羽織…
呉服に関わっている者なら、「悉皆(しっかい)」という言葉の意味は、誰しもが当たり前に理解できるだろう。一般消費者でも、キモノに少し馴染みのある方なら、これが直し仕事全般を指していると判っている。悉皆と一口にいっても、仕事…
道の辺の 壱師の花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は(万葉集巻11・2480) 道の傍らで目立っている壱師の花(彼岸花)のように、私の恋しい妻のことを、皆に知られてしまった。これは、万葉集第一の歌人・柿本人麻呂が詠ん…
きちんと映画館へ足を運んで、上映されている作品を見たのはいつのことだったか。その時何を見たのかも覚えていないので、相当以前のことに違いない。娯楽の少ない昭和の時代は、話題作は封切りを待ちかねて、多くの人が映画館に駆け付け…