キモノや帯は、どこの店で求めたのかということが、わかりやすい品物である。それは、大概「誂えた店のたとう紙」に包まれて保管されているからだ。県外から嫁いできた方から、品物の手入れを依頼されれば、やはりその方の実家に近いとこ…
家内に言わせると、私は「スーツとデスクワーク」が全く似合わない男らしい。これは、「オフィス」という場所とはほど遠いところにいるという意味で、つまりは「組織」というものと「縁遠い」人間ということを言い表している。 北海道に…
結婚前後の若い人のキモノの地色と言えば、一昔前までは、いわゆるピンク系統の色が多かった。時代と共に、振袖や訪問着・付下げ・無地あたりの「よそ行き」モノの地色傾向は、少しずつ変化してきている。 当店の若い方向けの品物の地色…
「しみも抜けず、補正も出来ない」ような品物があることを、先日お話させて頂いた。では、この「直せない」品は、もう使えないと諦めるしかないか、というと、そうでもないのだ。 「しみや汚れが取れない」というのは、「根本的に直せな…
「キモノ」が日常のものとされていた頃、「羽織」は無くてはならない存在だった。昭和40年代以前が舞台になっている、映画やTVドラマの女性の普段着(ウールや紬あるいは小紋、銘仙など)の上には、必ずと言ってよいほど、「羽織」が…
桜の花 散り散りにしも わかれ行く 遠きひとりと 君もなりなむ (釈迢空・折口信夫) 桜の季節になると思い出す歌がある。「桜の花がはらはらと散りゆくように、君は別れて、遠い人になってしまうのだろうか。」 まさに、「惜別」…
「直し」の仕事を受けても、全てが上手くいくということはない。特に、「しみ」や「変色、ヤケ」などの依頼では、品物を預かった時点で、「かなり難しいのでは」と思えるモノも多い。 ただ、その場の自己判断だけで、お断りすることはま…
今日は、年度始めの日。多くの企業で「入社式」がとり行われた。厳しい「就職戦線」を勝ち抜き、「社会人」として第一歩を踏み出す「門出」の日である。 昔から、会社を辞めたくなる節目は、「三日、三ヶ月、三年」だと言う。入社して、…
「よろず屋」というのが、どんな形態の店なのか、若い方では知らない方も多いだろう。 昔、田舎へいくと、食料品から、日用雑貨まで、何でも売っている店が、集落に一つ、二つはあったものだ。これが、「よろずや」である。「よろず」=…
以前、「黒留袖」が現代において、「消え行く式服」になりつつあることを、お話したことがあった。 人生の節目である「式」というものが、形式にとらわれないものになり、昔から続く風習や習慣を守る意識が薄れた。「結婚式」のあり方な…