6月の中旬、長い間うちの紋仕事を請け負ってくれた、紋章上絵師の西さんが急逝した。享年、72歳。亡くなる僅か一週間前、出来上がった黒留袖の紋入れを受け取りに仕事場へ行き、話を交わしたばかり。なので訃報を聞いた時は、なかなか…
先日、長くお付き合いを頂いている大学の先生から、「最近の大学は、すっかり就職予備校と化してしまった」と嘆く声を聞いた。本来大学の意義は、自分が専攻する学問を探求することにより、新たな知見や知識を得ることだけでなく、様々な…
現代は、不寛容な社会と言われている。「みんなが同じであること」に強い意識があり、少数派の主義や信念を認めず、強く批判をしてしまう。そしてそれは、時として人格の否定にまで及んでしまうことがある。この原因は、社会全体に蔓延る…
「確か、一年目は月に1万円、二年目が2万円で、三年目が3万円。きちんとした給料が頂けるようになったのは、4年目以降でした」。バイク呉服屋で、もう30年以上も仕事を担っている和裁士の保坂さんは、自分の修業時代を振り返ってこ…
1000人あたり、1.7人。この数字は一昨年、生後一年以内に死亡してしまった赤ちゃんの割合。この乳児死亡率は、諸外国(欧米では平均2~5人)と比較してもかなり少なく、日本は世界の中で、赤ちゃんの養育環境が最も整っている国…
家で、最後にお雛様を飾ったのはいつのことだったか。長女が小学生のうちは、飾っていた覚えがあるのだが、それでも、もう20年も前になる。立派な七段飾りで、家内の両親が奮発して贈ってくれた豪華なもの。子どもが小さい頃は、狭いと…
呉服屋が書くブログなので、原稿の中で使う漢字には、どうしても「糸偏」が多くなる。ご承知の通り、経糸に緯糸を交差させると織物が出来上がるが、経も緯も織も全て糸偏である。また、素材や織物組織の名称などはまさに糸偏オンパレード…
つい、一週間前は冷房を使っていたというのに、ここ数日は、朝晩ストーブが欲しくなるような冷え込み。街を行く人の服装も、半袖から一足飛びにコートを着込む姿に変わっている。和装ならば、単衣から袷の帯付きを通り越して、すぐに羽織…
呉服に関わっている者なら、「悉皆(しっかい)」という言葉の意味は、誰しもが当たり前に理解できるだろう。一般消費者でも、キモノに少し馴染みのある方なら、これが直し仕事全般を指していると判っている。悉皆と一口にいっても、仕事…
私の家の紋は「丸に五三の桐」、妻の実家の紋は「丸に木瓜(もっこ)」。どちらも、最もポピュラーな五大家紋(片喰・桐・鷹の羽・藤・木瓜)の中にある、極めてありきたりな紋である。日本の家紋は、二万種類以上はあるとされているが、…