恐れ入谷の鬼子母神。びっくり下谷の広徳寺。情け有馬の水天宮。何だ神田の大明神。 いずれも、江戸天明期に活躍した狂歌師・大田南畝(おおたなんぼ)の作とされる地口だ。読んで判るように、地口なるものは、駄洒落のような言葉遊びの…
「かけはぎ」という直しは、キモノ補正の中でも、最も難しい仕事の一つである。かけはぎが必要になるのは、何らかの原因で、生地に穴が開いてしまった時や、生地を何かに引っ掛けて、切り裂いてしまったような場合。こんな生地の損傷は、…
先週の土曜日、以前から江戸小紋の誂を依頼されていた千葉在住のお客様を、竺仙へ案内した。浴衣販売盛りの今の時期(4~7月)は、土曜日も営業をしている。この会社は、モノ作りをするメーカー問屋でありながら、小売もしている。商い…
バックパッカーだった若い頃、夏にはよく川で行水をした。無人駅のホームや、倉庫の軒下に寝泊りしていたくらいなので、当然風呂に行く金はない。そこで頼りになるのが、川である。 北海道の奥地の川は、清冽で澄んでいて、水も冷たい。…
今や、風呂がない家というのは、ほとんど無いだろう。学生が借りるようなアパートやワンルームマンションでも、バスやシャワーの設備が付かない部屋はない。今の若者達は、清潔さを保つことが当たり前なので、風呂の無い生活など、考えら…
毎年、ゴールデンウイークが終わる頃には、急に暑くなり始める。甲府のような内陸の盆地では、特に気温が上がりやすい。連休最終日の7日などは、31.5℃を記録し、全国で最も高い気温となった。 春が終わりかける頃、テレビの気象情…
皆様は、「へぼ」という食べ物をご存知だろうか。砂糖や醤油、みりんなどで味付けして佃煮にしたり、バターで炒めたり、時には、混ぜごはんの具にすることもある。 へぼは、蜂の子の別名。山梨や長野、岐阜などの山国では、古くから貴重…
紋を入れる時には、まず紋型紙を作らなければならない。上絵や、染め抜き紋の場合、紋の輪郭を彫った型紙を生地に刷り込み、細部は筆を使って丁寧に入れていく。美しい紋姿にするには、正確な型紙の出来と、繊細な文様を描く技術力が必要…
バイク呉服屋は時折、ひとりでふらりと旅に出る。大抵、人知れぬ山奥の温泉や、誰も来ない小さな沼や湖の畔で、数日を過ごす。一応携帯は持っては行くが、掛かってきた電話に出ることはほぼない。家内には、居場所を告げて出掛けるが、よ…
仕事を終え、東京へ帰ろうと、京都駅の新幹線ホームに立っていると、ひっきりなしに上り列車が到着する。席が埋まっていたので、乗らずに一本見送っても、10分も待てば次の列車が来る。京都は、のぞみ、ひかり、こだまと全ての列車が止…