当店の入り口の一角に、様々な織部の器が並んでいる。多治見の陶芸家・佐藤和次さんの作品である。 織部の模様は、キモノの文様と共通する図案が多く見受けられ、また深い緑色の濃淡の繊細さは、友禅の染め出しに共通する色彩感覚ではな…
「手を入れる」仕事を承る時、一番大切なのが、依頼される方の気持ちだと思う。 品物に対して、どのような「思い入れ」があるかということが重要で、それによって、どの程度直してよいのか私の「覚悟」が決まる。 だから、その直す品が…
「雨上がり」に外へ出てみると、からりと晴れた空に心地よい風が吹きぬけ、夏のにおいを感じることがある。疾走するバイクから見えるのは、「富士山」「八ヶ岳」「茅ヶ岳」や「南アルプス」の山々。「盆地」であることの有り難さを実感す…
我々が扱う品物は実にデリケートなものである。そして、それは使っている間に様々な問題が生じる。「しみ」「色ヤケ」「カビ」「黄変色」「スレ」などその「症状」は多様だ。 また注意しないと、仕入れた品を店に置いておくだけでも、変…
ブログを始めて、1ヶ月になるが、様々な方にお読みいただき、本当にありがたいことだと思う。 ITに不慣れな(難民といった方がよいかも知れぬ)私だが、毎回書くテーマを決めて閉店後に一気に仕上げるようにしている。文章力のなさを…
「一寸の虫にも五分の魂」という諺はよく知られている。小さなものにもそれなりの根性や気持ちがあるので馬鹿にしたり侮ってはならないという意味である。 しかしメートル法で言い直せば、「3,788cmの虫にも1,89cmの魂」と…
「世代を越えてお召しいただく」ということを大前提にしている当店には、手を入れるために様々な品が「里帰り」して来る。 今日ご紹介するのも「母から娘」に引き継がれてゆく、今は亡き加賀友禅作家の品である。素晴らしい手仕事は、時…
夏の水辺はもっともわかりやすく涼感を表すことが出来る。水の流れは文様の中でも、変化のつけやすいものの一つである。 ある時は渦を巻き、ある時は逆波をたて荒々しく、時には穏やかな表情を見せ、と枚挙にいとまがない。また季節や気…
先日加藤くんからのメールでわかったことですが、「太田屋」さんの初代の曽祖父「増五郎」さんは、もともと目黒の生まれで、「加藤家」は徳川家光の時代から幕府の「鷹場」の管理をしていた名家で、農家でありながら「苗字帯刀」が許され…
呉服屋になるとは思っていなかった。昔の私を知る人はそう言う。 人の生き方や価値観は、若い頃の経験に影響されることが大きいと思う。 「何が大切なのか」ということを考える時間は、人が生きていく上で無くてはならないことであり、…