時間の制約がない旅というのが一番贅沢なことだと思う。自由に自分らしく、思うままに「時間」を使えることは、ある程度「若い時」でなければ難しい。 「むかしたび」は私が「自由に時間を使えていた頃」の話であり、私自身の「アーカイ…
「大学で日本史を専攻していた」というと、お客様から「やっぱり呉服屋さんらしいのね」などと言われることがある。 普通の跡継ぎであれば、「染織史」などを学んで、後々の仕事に役立てようとするだろう。しかし「呉服屋」になることを…
うちの娘達は一歳違いずつ三人である。だからそれぞれが「七・五・三」という年があった。一応「呉服屋の娘達」なので、その年には三人にキモノを着せた。もう15年も前のことだが、その時彼女等が着たモノは、次の代に受け継がれる。た…
牛首紬の故郷、白峰村を訪ねたのはもう30年以上前になる。福井県の勝山から京福バスで延々と辿った道が懐かしい。白山を眼前にして、藁葺きの家が散在する山深い里であった。「桑島温泉」に浸り、名物の堅い豆腐を食べた記憶が甦る。 …
「用の美」という言葉をご存知だろうか?これは「人々の日常の暮らしの中にある美」のことを示している。 柳宗悦が提唱した「民藝運動」のことは、以前このブログの「芹澤銈介」の稿で少しお話させていただいたが、端的に言えば「美」と…
キモノをよい状態に保つためにもっとも必要なことは、「風を通すこと」であろう。 一昔前までは、年に二度ほど「箪笥の中」のものを取り出し、部屋の中で、少し吊るされ、風を入れていた。この作業は、「虫干し」の効果もあるが、一番の…
秋分を過ぎたというのに、日中の気温はまだ30℃近い。年々「秋」を感じる時期が先送りされていくように思える。 今夏の甲府盆地の暑さは、例年にも増して過酷なものだっただけに、このところの朝夕の涼しさを、なにより待ち遠しく思っ…
この時期になると、「七五三」に関る仕事が多くなる。うちのようなやり方だと、「新しい品物を納める」ことよりも、ほとんどが「手直し」と「足りないモノの補充」だ。 三歳ならば、「産着」を直して使い、新しく用意するものは「被布」…
呉服屋には「色を決める」場面が多い。特に感じるのは「仕入れ」をする際である。 「自分の好きな色目」というのを誰しもが持っていると思う。はっきりした「濃い色」を好む人、柔らかい「薄い色」を好む人、また、「暗い色」や「パステ…
日、祭日だけは一日中店にいるようにしている。とはいっても「一人きり」なので、急な用事ができると「店主不在の張り紙」をして出かけることになる。幸い「商店街」の中に店舗があるので、「不測の事態」が起きても「周りの目」があるの…