考えてみれば、多くの人がマスクを求めて右往左往していたのは、昨年の今頃だった。入荷を待って、朝早くからドラッグストアの前には、長蛇の列が出来ていたことを思い出す。ネットでは、品不足を良いことに、とんでもない価格で売りに出…
全国各地で、例年より一週間ほど早く咲き始めた桜。東京では今がまさに満開で、本来ならこの週末は、絶好の花見日和になるはずだった。けれども、今だに収束しないコロナ感染は、そんな人々のささやかな春の愉しみをも奪ってしまった。 …
「和の装いとして、最も贅沢なことは」と問われれば、それは、職人が手を尽くした高価な品物をまとうことではなく、着用する場面ごとに、品物を沢山用意することでもない。それぞれの季節に相応しい姿を、キモノや帯、そして小物も含めた…
昨年秋に誕生した菅内閣は、社会活動全般のデジタル化推進を、政策の目玉に掲げた。この一環として始まった動きが、行政手続きにおける押印、つまりハンコの廃止である。政策を担当する河野太郎行政改革相は、手続きの99%で、印鑑を不…
一年に十二ある月の名前には、数字ではない、月ごとそれぞれに呼び名がある。睦月・如月・弥生・卯月など「旧暦での月の名前」は、「和風月名(わふうげつめい)」と呼ばれている。 月の異名の由来は、大変古い。江戸時代後期の文政~天…
平安時代の貴族女性の正装・女房装束が、何枚も衣装を重ねて着装する「十二単(じゅうにひとえ)であることは、皆様ご承知の通り。一番上には唐衣(からきぬ)と裳(も)、次に表着(うわぎ)、打衣(うちぎ)、さらに五衣(いつつころも…
学問の神様・菅原道真公が、雷様の成り変わりであることをご存じだろうか。道真公を祀っている社を天神社と呼ぶが、「天神」とは「雷神」を意味し、この神を畏怖して祈願の対象とすることを「天神信仰」と言う。 では何故、道真公は雷神…
二月も半ばを過ぎ、大学受験シーズン真っただ中である。長引くコロナ禍は、受験事情にも大きく影響を及ぼし、感染拡大や経済の急速な悪化によって、志望校の変更を余儀なくされた受験生も多いと伝え聞く。人生には運不運が付きものだが、…
平安京・京都から見ると、平城京・奈良は南に位置しているので、南都と称される。そのため、ここで花開いた奈良仏教を南都六宗と呼ぶ。三論・成実・法相・倶舎・華厳・律。それぞれの宗派は朝廷から保護を受け、平城京周辺に壮大な寺院を…
今から1700年前の中国・魏の国には、社会から隔絶した場所に実を置きながら、哲学的思想・清談に明け暮れる知識人の存在があった。これが「竹林の七賢人」と呼ばれた人たちで、清談とは、現実から逃避して自由に物事を論じることであ…