バイク呉服屋の忙しい日々

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バイク呉服屋の、天平文様コレクション  数々の華麗な正倉院デザイン

2021.05 04

3月末、アメリカ政府は人権報告書の中で、中国政府によるウイグル族の迫害を、国際法上の犯罪・ジェノサイド(集団虐殺行為)と認定した。100万人以上のウイグル人を収容して、強制労働や不妊手術を強要し、信仰するイスラム教を徹底的に弾圧する。これはまさに、民族を壊滅に追い込む迫害であり、人権抑圧そのものである。

当然、アメリカやカナダ・EU各国は、この状況を看過することは出来ず、中国に対して一斉に制裁措置を発動。人権侵害に関与した中国当局者の入国を禁止したり、資産を凍結する策に打って出ている。国際人権団体では、こうした取り組みを「前例のない協調行動」と評価しているが、日本政府は未だにこの蛮行に対して、見て見ぬふりをしているようだ。G7の中で唯一制裁に参加していない現状は、隣国で最大の貿易相手国ということを差し引いても、先進諸国から「人権意識の薄さ」を指摘されてしまうだろう。

 

新彊ウイグル自治区は、北方にモンゴルやロシア、西方にカザフスタンやキルギスタン、アフガニスタン、パキスタンと多くの国々と国境を接し、そこにはカラコルム山脈・天山山脈・崑崙(こんろん)山脈など、険しい山々が連なる。自治区の人口は約2500万人で、中心都市ウルムチには450万人が暮らし、その90%をウイグル人が占めている。

この地域は元々、トルコ系のテュルク民族の居住地であり、中央アジア・東トルキスタンの主要都市として発展。そのため中国よりもむしろ、西方のタジキスタンやウズベキスタンとの関係が深かった。しかし、中国漢や唐の時代になると、砂漠のオアシス都市となって発展した西域は、直接支配される。そこでこの土地が、シルクロード・絲綢(しちゅう)之路の中心として、東西交易都市の役割を果たすことになったのである。

 

今もキモノや帯の図案として残る、大陸伝来の模様。いわゆる正倉院の装飾品にあしらわれている天平の文様は、絲綢の道を通り、当然そこで大勢のウイグル人の手も経て、日本へと伝えられたものだ。遠くペルシャやエジプトで起こった図案は、地域ごとの特性を包括しながらアレンジされ、正倉院に辿り着いた。

毎年五月の連休には、過去にご紹介した画像を再登場させる「まとめ記事」で、手抜きをさせて頂くが、今年は「天平コレクション」と称し、正倉院に由来する文様をモチーフとした品物をご覧頂こう。

(薄茶地 ペイズリー小唐花文様・京友禅訪問着 黒地 唐花に含授鳥文様・袋帯)

品物は、ブログ掲載順ではなく、アイテムごとにご紹介していく。記事の中で使った品物には、その記載日を記しておくので、詳しい内容をご覧になりたい方は、ぜひ各々の稿もお読み頂きたい。またそれぞれの品物には、正倉院由来としてあしらわれている文様のテーマがあるので、判るものだけ一緒に記した。では、始めることにしよう。

 

【フォーマル組み合わせ】

(白地 吉祥唐草模様 袋帯・龍村美術織物  牡丹唐花文)

(薄グレー地 縦並菱に唐草模様 京友禅付下げ・菱一  唐花花卉文)

(2017.10.22 掲載)

 

(白地 宝相華模様 袋帯・紫紘  八角唐花宝相華文)

(八角鏡唐花模様と熨斗に鳥襷唐草模様 京友禅黒留袖・菱一)

(2014.3.26 掲載)

 

(生成色 円形米字形 並び唐花模様・紗唐織袋帯・錦工芸  正倉院錦覆図案)

(2016.7.24 掲載 キモノ・白地 御所解模様 京友禅絽訪問着)

 

【フォーマルキモノ・コート】

(白茶地 ペイズリー唐草と小唐花散らし 京友禅訪問着・菱一 ブログ未掲載品)

 

(白茶地 花卉花喰鳥模様 京友禅訪問着・品川恭子  2014.2.2)

 

(阿仙茶色 天平花の丸模様 京友禅絵羽道行コート・品川恭子 2014.2.9)

 

(勿忘草色 天平花の丸模様 京友禅付下げ・松寿苑  2015.2.11)

 

(水色 唐花流れ模様 京友禅付下げ・菱一  ブログ未掲載品)

 

(雲母色 宝輪模様 相良刺繍付下げ・菱一  2015.9.25)

 

【フォーマル帯】

(黒地 天平鏡花文・龍村美術織物 正倉院平脱皮箱図案 2017.2.22)

 

(白地 聖樹瑞鳥錦文・龍村美術織物 正倉院夾纈屏風図案 2014.10.29)

 

(銀地 光吉装華文・龍村美術織物 唐草花卉模様 2014.10.19)

 

(黒地 慶雲清錦文・龍村美術織物  菱取雲唐草模様  ブログ未掲載品)

 

(銀プラチナ地 敦煌飛舞文・龍村美術織物 壁画飛天模様 2015.1.9)

 

(蘇芳色 インド菱花文・龍村美術織物  インド唐草模様 ブログ未掲載品)

 

(白・黒地 花見鳥文・龍村美術織物 唐草花喰鳥模様 2015.3.15)

 

(本金箔地 四神聖獣文・泰生織物 唐花の丸神獣模様 2015.12.23)

 

(薄グレー色 忍冬蔓唐草文・梅垣織物 パルメット唐草模様 2015.3.31)

 

(赤紫色 葡萄唐草文・龍村美術織物 正倉院几褥図案 2015.9.12)

 

【その他】

(白地 オリエンタル神殿模様 疋田絞絵羽織 2015.10.31)

 

(プラム色・黒色 インド唐草模様 ちりめんバッグ・岡重 2014.10.19)

こうして、これまでバイク呉服屋が扱った「天平デザインの作品」を見ていくと、やはり龍村の手掛けた帯が最も多い。初代龍村平蔵が復元した正倉院裂は数知れず、現代の作品として製織された図案を見るにつけても、彼の偉大な仕事ぶりが伺える。

また染モノでは、京友禅の品物に天平的な図案が多い。やはり加賀友禅のような写実的意匠では、唐花や唐草のような「空想的花文」を使うことは少ないのだろう。東洋と西洋を融合した文様は、華やかさや煌びやかさが前に出るため、ごく自然にフォーマル的な装いとなる。従って、礼装モノのあしらいに多く使われ、カジュアルモノには少ないという傾向が見受けられる。

今回は24点の品物をご覧頂いた。どの図案より好きな唐花・唐草に代表される天平文様。これからも大いに、ブログの中で取り上げていきたい。なお、今日ご紹介した品物は全て、すでに売れてしまっているので、手元には無い。今となっては私も、こうして画像でしか作品に会えないので、何となく寂しい気がする。

 

36年前、私が一人旅をした中国東北部や内モンゴル地域には、少数民族であるツングース系のオロチョン族やエヴェンギ族の人々の姿がありました。彼らは、ロシアに近い興安山脈やモンゴル草原で、移動しながら狩猟をする民。勇猛でありながらも、牧歌的に暮らすその姿は、今も心に残っています。

55にも及ぶ少数民族を、全て漢族に同化しようとするのは、所詮無理というもの。そして、これまでの中国の支配者を考えてみると、現代の中華人民共和国は漢族ですが、それ以前の清が満州族、元は蒙古族、金は女真族、遼は契丹族等々のように、入れ替わり立ち代わり、為政者の民族は交代しています。

「歴史は繰り返す」のであれば、漢族の支配も永遠ではありません。これは中国に限らずとも、どんな国家でも「驕れる者久しからず」ですね。

今日も、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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このブログに掲載されている品物は、全て、現在当店が扱っているものか、以前当店で扱ったものです。

松木 茂」プロフィール

呉服屋の仕事は時代に逆行している仕事だと思う。
利便性や効率や利潤優先を考えていたら本質を見失うことが多すぎるからだ。
手間をかけて作った品物をおすすめして、世代を越えて長く使って頂く。一点の品に20年も30年も関って、その都度手を入れて直して行く。これが基本なのだろう。
一人のお客様、一つの品物にゆっくり向き合いあわてず、丁寧に、時間をかけての「スローワーク」そんな毎日を少しずつ書いていこうと思っています。

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