明日は6月1日、衣替えである。
当店もゆかたを始め、小千谷縮や明石縮などの夏織物、絽小紋、絽付下げなどの夏染物も飾り、単衣、夏の薄物へと模様替えをした。
何分、ひとりの作業のため、なかなか仕事が捗らないのだが、今日は夕方、片付けの最中にお客様が相談に見えたので、仕事を終えたのがかなり遅くなってしまった。
そのお客様の相談が今日のテーマ。
それは「7月7日の会社の同僚の結婚式に何を着たらよいのか?」という相談。うちの店は30~40歳代の方が割とお見えになるが、その方もその年代のキャリアウーマンの方だ。「結婚式」なので、着てゆくアイテムは「無地」「付下げ」「訪問着」あたりがまず無難であるが、問題は「薄物=絽や紗」でなくて「単衣」でもよいかということである。
今までの慣習からすれば、7月に入れば「絽か紗」のいわゆる「薄物」を使う。「単衣」は6月と9月のお召し物になる。そのお客様は「単衣」しか持っていないので、7月にそれを使うのは「不自然で間違っていること」にならないかという心配をしている。使う予定のアイテムは「単衣の訪問着」で合わせる帯は「白地の紗袋帯」だ。
お客様は、今後あまり使う予定のない「絽付下げや絽訪問着」を買うことを躊躇していて、なるべくなら手持ちの「単衣」のもので済ませたいという希望である。
さて私の「回答」である。私は「単衣の訪問着」でもよいと答えた。わざわざそのためだけに「絽」のものを買うのはもったいない。しかも合わせる帯は「紗袋帯」なので、「薄物」らしさは出せるように思う。なにも「教条的」に7月は「絽か紗」にこだわる必要はないのではないだろうか?読んでいる方に「オマエは商売人ではないな」とお叱りを受けるかも知れないが、「持っているもの」で済むならそれが一番だ。
キモノを日常に着ているうちのお客様たちに聞くと、「単衣」や「薄物」をお召しになり始める時期は千差万別である。ある方は、「5月の連休明け」になったら「裏付き=袷」なんか暑くて着てられないから「単衣」になってしまうし、ある方は「薄物の絽や紗は6月下旬から9月半ばまで着ている」と言う。
つまりは「臨機応変」が最善ではないだろうか。「きちんと着るものの時期を守って着なければ」と考える方はそれはそれでよい。「茶道」の方たちはこのことをきちんと守られることが多いが、一般の方は、多少の融通やゆるみがあってよいと思う。すでに「真夏の結婚式」に「袷の黒留袖」を着ている方がほとんどで、「絽の留袖」など最近ではほとんどお目にかからないような現状もあるのだ。
ただ私は「袷」を「真夏に着る」(留袖など着る場合を除き)のはどうかなとも思う。「単衣」は5月半ば~7月前半と9月~10月前半、「薄物」は6月後半~9月半ば」そのくらいに考えたら如何だろうか?重なっている時期はどちらでもよく、着る日の天候や気温、着てゆく場所に応じて選べばよいと思う。
この国も「温暖化」の影響で、以前に比べて「夏」が長くなっていると、ここ数年強く感じられる。「キモノ」の「慣習」も少し見直されてもよいのではないだろうか。
「単衣」や「薄物」にはそれにふさわしい色や花、文様があります。また素材も「絹」「綿」「麻」など色々なものがあり、「着心地」もそれぞれに異なるという「夏」ならではの楽しみ方もあります。「涼やかに見える夏のお召し物」に目をとめてみて下さい。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。