この20年の間の呉服市況の低迷により、多くの問屋、メーカーが倒産や廃業に追い込まれてきた。前にお話した通り、市場規模が全盛期の1割以下に落ち込み、生産量(染呉服)は5%以下という、考えられないような少なさの状況ならば、あ…
私が訪ねたことのない県はただ一つ。ここは呉服屋として、必ず行かなくてはいけない場所なので、そういう意味では、業界人として失格である。 私の祖先には「坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)や松浦武四郎(まつうらたけしろう)…
「似て非なるもの」という「まぎらわしいモノ」が、呉服には多すぎると思う。 前回の話の、人の手による「糸目」と「型糸目」の相違は、注意してみればまだ気が付くこともある。だが、例えば、紬類など織物の場合、糸染めが「天然染料(…
世間一般では、「キモノ」は「高いモノ」と認識されているようである。 だが、何故「高い」のかということになると、はっきりわからない方がほとんどではないだろうか。実は、キモノの中には「高くない」ものがたくさんある。 もっと言…
これだけの暑さが続くと、「薄物」であっても「キモノ」を着ることを躊躇してしまう方も多いのではないだろうか。 「汗」をかかないで「薄物を着る」という訳には、なかなかいかない。 重要なのは、表地よりも下に身に付けるもので、「…
結婚式は時代を映す鏡かも知れない。 昭和30年代以前は、「家婚」つまり、「新郎側(婿入りなら新婦側か)の家」で双方の親戚や友人が集まり、そこで料理や酒を振る舞い、挙げられていた。 昭和40年代からは、「ホテル婚や結婚式専…
「手間をかける」ということが軽んじられている時代だと思う。 「試行錯誤」を繰り返し、何度も立ち止まり、迷いながら一つのものを作り上げる。知識や経験は年を重ねるごとに深まり、その人の「年輪」として積み上がる。「熟練者」は常…
「簡潔」に語るということが昔から苦手だった。文章を書き始めると「とりとめもなく長くなってしまう」のが悪い癖である。 昨夜東京で、数年ぶりに北海道にいた頃の友人たちと会って、旧交を温めたが、その席で、30年来の女性の友人か…
ここ数年、お客様に「紋」をお聞きしても、ご自分の「紋名」がわからない、という方が増えた気がする。 喪服、江戸褄(黒留袖)、色留袖、色無地などは、「紋」がわからなければ、仕事には取り掛かれない。箪笥の中に「紋」の付いている…
「ライフライン」と呼ばれるモノは何だろうか。まず電気、水道、ガス、そして通信手段である電話。今は携帯やパソコンも生活に必需なものとなった。 30年以上前、東京で暮らしていた下宿には、テレビや電話がなく風呂もなかった。冷暖…