バイク呉服屋の忙しい日々

今日の仕事から

1月のコーディネート 「二十歳は二十歳らしく」緋色・栗山紅型振袖 

2015.01 21

街を歩くと、真っ赤なセーターや濃ピンクのショールをお洒落に着こなす年配の方をよく見かける。着姿に違和感はなく、むしろその若々しい姿に好感を持つことが多い。

年齢に相応しい色というものが、変わってきている。洋服や小物の色ほどではないが、キモノの地色にもその傾向が見られる。一昔前までは、年齢が進むにつれ、どちらかと言えば落ち着いた濃い地色が好まれていたのだが、最近は薄地の柔らかい色を選ばれる。

銀鼠や灰桜、それに生成色など衿元が明るくなる色。優しく、上品な印象が残るような着姿を求めておられるのだろう。もとより、今の6,70代の方は若い。とくに女性は行動的であり、外へ向かって自分を発信しようとされている方も多い。明るい色を好まれることは、前向きに生きる姿を表しているとも言えよう。

 

では、若い方はどうか。振袖の地色ということに限定すれば、やはり赤が主流のようで、ピンク、朱、黒あたりの色が基調になっている。青や水色、黄・緑系の色はどちらかと言えば少数派。いずれにせよ、明るく、若さを強調できる色が求められる。一時、「大正浪漫」と称して、少し褪せたような沈んだ色が流行ったことがあったが、それも一過性のことで、やはり鮮やかな色に戻った。

50代以上の方が、若い頃親に作ってもらったキモノの地色は、振袖に限らず、赤や朱・ピンクなどの暖色系になっていることが多い。その頃の親達は、若い時に着る色を限定していた。それはむしろ、決め付けていたと言ったほうがいいかもしれない。親ばかりか、売り手の呉服屋の方でも、迷わずこの色を勧めていた。

年齢相応の色が存在していた証拠だが、振袖の色目だけを見れば、色と年齢の相関性はあまり変わっていないように思われる。

 

年明けのコーディネートということで、二十歳らしさを思い切り感じられるような振袖を取り上げてみよう。振袖でしか表現できない色と模様があることをわかって頂けるように思う。

 

(緋色鬼シボちりめん地・遠山文様京紅型振袖 栗山吉三郎工房)

紅型(びんがた)が持つ魅力、それは見る者を引き付けるような挿し色の鮮やかさと、型絵染ならではの細やかな柄付け、そして、キモノ全体を一つの模様に見立てたような、美しさにある。

紅型という染色技法が琉球王国で生まれたのは、14~15世紀頃。王朝時代の沖縄では、王族や位の高い者でなければ着用出来なかった。南国の風土をそのまま表現したような、強烈ともいうべき色合いや、インド更紗を発祥とするような独特の模様は、王家の儀礼衣装として位置づけられており、一般の沖縄人からは、縁の遠いものであった。

戦前、沖縄を訪れた民芸運動の創始者・柳宗悦により、その美術的価値が認められたことで、新たな段階を迎える。沖縄戦で壊滅的な打撃を受けながらも、城間栄喜氏らの手により復興し、今に至るまでその技法は受け継がれている。

ご紹介している紅型は、琉球紅型ではなく、和紅型と呼ばれる品物だ。沖縄ではなく、本土で染められたものということになる。紅型は、京都や東京でも作られていて、その染色技法には琉球物とわずかな違いが見られる。

栗山吉三郎は、和紅型の代表的作家である。戦前、京都在住の画家だった栗山が、民芸運動に感化されて沖縄を訪ねた際、出会ったのが紅型だった。彼はこの染めに魅せられ、京都に戻り自分で紅型を作ろうと決意する。1953(昭和28)年のことである。

 

琉球と和、紅型を作る過程での違いは、染料にある。琉球で使われるものは顔料、和紅型では染料を使う。顔料は、粉末状で水に溶けないものなので、染色に用いる時には大豆の汁に溶かして使う。顔料というものは、従来塗料や化粧品として用いられるもの。ということは、生地の表面だけに色が乗っていることになる。

一方の染料は水に溶けるので、生地の繊維に浸透する。友禅をはじめ、一般の染色に使われている方法。京都人の栗山は、生地へのなじみを考え染料を用いることにした。

顔料を使った琉球紅型より、大人しくなる色合い。特に黄色系を使ったところは、違いが明らか。琉球の黄色は、南国の太陽を思わせるような鮮烈な色になっている。

 

この振袖の基調になっている色は「緋」の色だ。赤の代名詞でもある茜色を一回り濃くした色にあたる。模様は、遠山文と呼ばれるもので、山の連なりの向こうに雲が配されている。キモノ全体が一つの風景になっている総模様の品。

 

(黒地・彩笹松文様袋帯 梅垣織物)

以前、振袖のコーディネートをお目にかけた時にも、梅垣の黒地松竹梅模様の帯を使ったが(昨年2・19の稿)、その時の品物よりも大胆な構図である。振袖の模様が込み合っており、その上鮮やかな多色使いなので、それを押さえ込んで帯としてまとめるには、やはり黒地ということになる。

笹は竹類に属し、その葉は松とともに図案に用いられることが多い。上の帯は迫力を感じる柄付けで、若さを引き立てる豪華さがある。

 

キモノ、帯とも迫力のあるもの同士の組み合わせ。二十歳でなければ着ることが難しいような、鮮やかさだと思える。ただ、難を言えば、帯の模様が大胆なために、キモノの柄と重なり、すっきりさに欠けるかもしれない点。もう少し、黒場の多い帯で合わせた方がよい気もするが、如何なものだろうか。

前の合わせを写したところ。後よりも前で合わた方が、キモノと帯の違和感がない。総模様の紅型は、これくらいの迫力のある帯を持ってこなければ、押さえがきかない。

 

(鶸色疋田帯揚げ・丸ぐけ金通し鶸色帯締め・花の丸模様刺繍衿 いずれも加藤萬)

緋色のキモノと黒地の帯を繋ぐ色は、柔らかい緑系の鶸(ひわ)色。使う重ね衿の色も同色にする。赤や朱系の小物使いだとキモノの緋の色に埋没してアクセントになり難い。

刺繍衿と帯揚げ・帯〆の合わせ。刺繍衿の中にある楓の緋色とキモノの雲模様の色がほぼ同じで、衿元のアクセントになっている。衿のほんの小さな模様に付けられている色でも、着姿には影響を及ぼすので、注意が必要だ。

 

ついでなので、別の振袖に上の黒地の帯を使うコーディネートを簡単にご紹介しておく。同じ帯を合わせても、まったく印象の違う対称的な振袖姿になることをお目にかけてみよう。

(生成色・雲取りに宝尽し文様振袖 菱一)

今ではあまり見かけない白に近い生成地色に、型を使った染め疋田の雲とおめでたい道具が散りばめられた、宝尽し模様。シンプルだが、古典文様の集大成のような柄行きである。派手な色使いはないが、落ち着きがあり、今時の振袖にはない「しっとり感」もある。

同じ帯を合わせてみる。この時使う小物は、赤系の緋か茜色であろう。前の振袖で使った鶸色では、いかにも弱い。小物の色はキモノ地色や柄の雰囲気と関係があり、同じ帯を使ったとしても、帯揚げや帯〆の色は変わる。

黒地の帯は重宝なもので、ある程度どんな地色(黒や茶などの濃い地色を除き)の振袖に合わせても、それなりの表情を作ってくれる。合わせに困った時は「黒地」なのである。

 

どんな振袖を選ぶか、それは使うお嬢さんの色の好みや、体型、それに性格までも考慮すべきであろう。目立つことが好きな方、控えめな性格の方、そんな単純なことでも選ぶ品物が違う。

同じ帯を使った二枚の振袖でも、印象はまったく違う。どんな着姿にしたいか、そのコンセプトをはっきり決めることが、品物を選ぶ時の大きな基準になる。お嬢さん本人はもちろん、ご家族のみなさんでこのことを考えた上で、呉服屋に相談していただきたいと思う。

 

自分のキモノ姿を想像するということは、難しいことではありません。まず、どんな色を着てみたいか、ここが最初になるでしょう。そして、大人っぽくしたいのか、かわいい姿にしたいのか、簡単なことでも、品物選びのヒントになるのです。

私が振袖の仕事を依頼された時には、まず品物を持たずにお嬢さんに会いに行きます。そこで好む色や模様を聞き、同時にお顔立ちやその方の雰囲気を察して、お勧めする品物を前もって選びます。もちろん前触れなく店に来られて、すぐに品物を選ぶ場合もありますが、そんなときは僅かな時間の間に、勧める品物の方向性を探さなければなりません。

品物を選ぶ場合、沢山の中から見つければ良いというものではありません。呉服屋の役割は、いかにそれぞれのお嬢さんに向く品物を選び、お勧めすることが出来るかということです。

それには、本人のことを知ることが何より大切で、そこを理解していれば、ある程度品物を絞ることが出来ます。人にはそれぞれ「その人らしさ」というものがあり、着姿の中に少しでも「らしさ」を表現出来れば、それが「似合う」ということに繋がります。

何年経っても振袖の仕事は難しいですが、それぞれのお嬢さんの「らしさ」を探しながら、丁寧に選んでいきたいと考えています。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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このブログに掲載されている品物は、全て、現在当店が扱っているものか、以前当店で扱ったものです。

松木 茂」プロフィール

呉服屋の仕事は時代に逆行している仕事だと思う。
利便性や効率や利潤優先を考えていたら本質を見失うことが多すぎるからだ。
手間をかけて作った品物をおすすめして、世代を越えて長く使って頂く。一点の品に20年も30年も関って、その都度手を入れて直して行く。これが基本なのだろう。
一人のお客様、一つの品物にゆっくり向き合いあわてず、丁寧に、時間をかけての「スローワーク」そんな毎日を少しずつ書いていこうと思っています。

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