バイク呉服屋の忙しい日々

その他

コラムブログ公開から一年

2014.05 17

早いもので、このブログを公開して今日で一年になります。18000人に近い方々が、このページを訪れ、私の至らない文章を読んで頂いたことに大変感謝しております。

朝・夕の通勤電車の中、「スマホ」で読んで下さる方、呉服に関する「調べ物の途中」で、検索しているうちに偶然ここを訪ねられた方、どなたかの紹介で、このブログを知った方、様々な経緯で読んでくださる方、お名前もお姿もわかりませんが、本当に有難うございます。そして、「やたらと長くて、読み難くて」申し訳ないです。

昨年の5月に公開した頃は、一日の訪問者数もひと桁で、月に200人にも満たなかったのですが、徐々に増え、今では、一日平均100人ほどの方に読んで頂いております。この数は、当初考えていた数より、はるかに多いものです。

文章修行などしたこともなく、また元来がいい加減な性格なので、「下書き」などせず、「思うがまま」に書き連ねているため、内容がわかりにくく、何を言わんとしているのか意味不明なことも多々あることでしょう。そう思いつつ、一度書いたものを見直そうとせず、そのまま放置しているところが、私のいい加減な性分なのでしょう。

 この「ブログ」は、「日記」ではなく「コラム」のような形式で、その日に書く「テーマ」を決めて、「一回で読み切り」にしてあるのですが、「起承転結」がうまく機能せず、話題が四方八方に飛び、取りとめのない文になっている回も、かなり見受けられます。

今日は、一年という「節目」なので、少し「雑感」を書いてみましょう。

 

バイク・ミラー越しの看板とウインド(加賀友禅の黒留袖)

仕事場(店)と自宅は3キロほど離れている。毎朝「通勤」にもバイクを使う。雨の日でも「合羽」を着込んでの発車。このバイク、1988(昭和63)年製造。この年は家内と結婚した年でもあり、両方とも私に長年連れ添ってくれた「欠かすことの出来ないパートナー」である。

ここ1,2年、バイクには様々な不具合が発生し(部品の寿命)、「井上モータース」での治療が欠かせない。言うことを聞かないのは、「奥さん」も同じであり、思うようにならない。こちらは、「直しよう」もないので、そのまま放置である(むしろ私が放置されていると言う方が正確だが)。

「昭和のバイク」は、「昭和的な商いをする」ことの「象徴」のようなものだ。「昭和的」というのは、どのようなことかというと、「モノを真ん中にして、人と人が相対している姿」である。

 

今、スーパーやコンビニで、その店の者と話をすることはほとんどないだろう。自分の買い入れるモノだけをカゴに入れ、レジで支払いをして終わりだ。これが進化したのがネットで、「家」にいながら「カゴ」に入れて24時間買い物が出来る。店舗に行かないのだから「店の者」と顔を合わすこともない。そればかりか、「売っている場所」すら、行ったことのない所にあることも多いだろう。

消費者にとって「欲しいモノ」さえ手に入れば、余計な人間関係など不要だし、支払いも「カード」や「ネットバンク」を使えばよい。店側も、余計な「人件費」を使わずにモノを売ることが出来、代金の回収も楽である。

つまりは、双方ともに「効率」と「利便性」に重点を置き、消費者は「自己責任」でモノを買い、売り手は品物の情報をHPなどITを利用して知らせる。「スマホ」の登場により、消費者はどこで何をどのくらいの価格で売っているのか、すぐに「検索」もできる。「より早く」「より安く」「より効率的」に品物を手に入れる手段は進化するばかりである。

これから、時代とともに、「リアル店舗」の存在はもっと薄くなることは容易に想像出来る。「百貨店」ではまだ、「相対」での接客による商いの形を残すが、それが可能なのは豊富な品揃えや、個性的なテナントを呼び込める大都市だけの話だろう。すでに「地方のデパート」は押しなべて苦戦を強いられている。

 

人は「話す」ことによって様々なことを伝える。それは「商い」ばかりではない。すべての生活の基本だ。夫婦・親子・兄弟・友人・恋人・同僚・隣人、どの人間関係を取っても「会話」を除いては、成り立たない。

「意志」や「思い」を伝えるには、「会う」ことが一番と考えられないだろうか。電話やメールでは伝わらない「表情」や「しぐさ」から、わかることがある。「面と向かって向き合う」ことで理解できることも多い。この「リアル」な相対が社会から消えつつあるように感じられる。そこには、「表面だけの繋がり」を多とする、現代の人間関係を伺い知ることが出来る。

 

「昭和的商い」というのは、売り手が「買い手の気持ちをどう汲み取るか」ということから始まったように思う。モノの売買は「一方通行」ではいけない。「買う側」の希望を聞いて、それにふさわしい提案をしていく。そのことで双方が納得できるような商いにしていく。つまり「互いの意志の疎通」というものがあって、初めて商いが始まるのだ。

社会の変化に伴い、廃れてしまったこの商い方法だが、「売り上げ」の量や経営最優先ではない、「効率」や「利便性」に捉われない、面倒だが、「人間くさい」やり方である。

呉服屋の扱う商品は、「説明をかなり要するような」品物であり、長く使うことを目的とした品物でもある。実際にモノを売る時、また直す時、消費者や依頼人の希望を聞かなければならないし、「わかりにくいこと」だけに、正確な情報を伝える必要もある。私は、「呉服屋の仕事」は、「相対」することでしか出来得ないと考える。

そもそも、「呉服屋」の立ち位置は、消費者と品物あるいは、消費者と職人を繋ぐ「取り持ち屋」のような存在と思われ、なおさら「相対」の必要がある。

そうは言っても、現在、ネットで商いしている呉服屋の数はかなりある。また、「展示会形式」の「短時間での商い」をしている呉服屋も多い。それはそれで構わないし、その形態で品物を購入している消費者が満足しているなら、それで良しとする。私が、この商いの方法は否定するものではなく、これからの時代「主流」になるやり方かとも思う。

 

だが、しかしである。

 「バイク呉服屋」が目指すもの、それは、「人と人」がモノを挟んで繋がることを、「リアル」に感じること。つまりは「昭和的な商い」である。それが、今の時代にそぐわない仕事のあり方だとしても、「自分らしい生き方」にはなる。また「個人」だからこそ出来る、仕事のあり方だと思う。社会がどのように変わろうとも、「他人は他人、自分は自分」、ある意味では、身勝手な「唯一独尊」の考え方と言えようか。

 

このブログの特徴は、「どのような考え方が根底にあって」仕事をしているかを、伝えていることと捉えているし、自分が読んで下さる方に最も伝えたいことでもある。

ここでご紹介している品物の、技術的なことや歴史的背景など、私の書いていることなど、取るに足らないことばかりであろう。世間の呉服屋さんの中には、私など足元にも及ばない知識や見識を持って仕事をされている方は大勢おられる。

その方々からすれば、「大したことは書いてないし、呉服屋として基本的に持たなければならない、当たり前の話にすぎない」と思われるはずである。それでも、今の私が持っている知識の範囲で、出来る限りの情報や、毎日の「リアル」な仕事内容を書いていきたい。

ブログ上で話すことは、何も特別なことではなく、自分のところで扱っている(または以前扱った)品を例としたり、自分が請け負った「直し」の仕事を紹介したり、とごく当たり前の日常である。そして「取引先問屋」の話や仕事を出している「職人」の話など、これまた、毎日お付き合いしている方々の話である。

このブログは、「キモノ」に関心がない方や「キモノを着ない」方にも、「呉服屋」の仕事の一端を垣間見て頂くことも、一つの目的と言える。よく「呉服屋の敷居は高い」と一般の方々に言われることがあるが、中で「どんな仕事」がなされているかということを、ぜひ知って頂きたいと思う。実際にそこで仕事をしているのは、私のような「呉服屋の主人」には似つかわしくない者もいるのだから。

 

「雑感」というより、やはりまとまりの付かない話を書いてしまいました。カテゴリーの中に、「ノスタルジア」という古き良き品物を紹介する項目がありますが、このブログ全体を通して、「古き時代の懐かしさ」を少しでも感じて頂きたく思います。

モノ作りをする職人やモノを直す職人は、「時代に流されない」気概を持って仕事を続けています。「不易流行」とは、たやすく変えることの出来ない技術がもたらすものでありましょう。

「昭和のバイク」と「昭和の家内」が、どこまで持つかわかりませんが、出来る限り「いたわりながら使い倒して」、これからも付き合っていこうと思っています。そして、「昭和の薫り」がどこかに残るような「コラムブログ」を、「淡々と」書いていきたいと考えております。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

皆様のご感想をお待ちしております。店舗案内に表示してあるメールアドレスよりお寄せ下さい。お礼として、「バイク呉服屋」の長いお返事を送らせていただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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このブログに掲載されている品物は、全て、現在当店が扱っているものか、以前当店で扱ったものです。

松木 茂」プロフィール

呉服屋の仕事は時代に逆行している仕事だと思う。
利便性や効率や利潤優先を考えていたら本質を見失うことが多すぎるからだ。
手間をかけて作った品物をおすすめして、世代を越えて長く使って頂く。一点の品に20年も30年も関って、その都度手を入れて直して行く。これが基本なのだろう。
一人のお客様、一つの品物にゆっくり向き合いあわてず、丁寧に、時間をかけての「スローワーク」そんな毎日を少しずつ書いていこうと思っています。

ご感想・ご要望はこちらから e-mail : matsuki-gofuku@mx6.nns.ne.jp

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