バイク呉服屋の忙しい日々

現代呉服屋事情

賢い消費者になるために・展示会を見極める

2013.08 27

私は「クレジットカード」を一枚も持っていない。それどころか「銀行カード」も持っていない。「アナログ人間」ここに極まれり、である。

およそ、「カード」というものを利用したことがないのだ。「パスモ」「スイカ」ですら使わない。それがなくても、日常生活に何の不便も感じたことがない。銀行へゆくときは「通帳」を持参である。

だからといって、多額の現金を持ち歩いているということではない(悲しいかな、今まで2万円以上入っていたことがない)。例えば、千円しか財布になければ、それなりに過ごせばよいし、沢山入ってなければ不安ということもない。

「衝動買い」したことや「何としても欲しいもの」があったことがない。何もかも「ないない尽くし」。こんな私は真につまらない「消費者」であろう。

今日は、「賢い消費者」になっていただくため、のお話を少ししてゆこう。

 

まず、呉服屋への「支払い方法」から話を進めてみたい。だいたい、お客様の「支払方法」は、「買う側の利便性」が真っ先に尊重されるべきというのは、「理屈」では理解できる。また、「カード払い」「ローン払い」は物を売る側にもかなりのメリットがあることは認める。

それは、お客様の品代という「債権」を「カード会社」等に「肩代わり」してもらい、面倒な集金業務や、「品代のこげつき」を回避できること。そして、代金が短期間に「回収」でき(カード会社から手数料を除いた分の全額が振り込まれる)、店の経営上から考えても、極めて使い勝手のよい制度なのである。

「呉服屋」のような「高額品」を取り扱う店で、「カード」も「ローン」も使えない店というのは、どれくらいあるだろう。私はうちの店以外に聞いたことがない。今は、どんな品を扱おうが、飲食店だろうが、扱いはあるはずだ。

「現金」を持たずに買い物が出来る「便利さ」があることも認める。お金を持ち歩く「リスク」も回避できる訳だし、何よりも、買いたい時に買え、支払いは後からなのだから、こんなに「消費者」の側に立った「道具」はないのである。

 

「無駄なもの」「使いもしないもの」を買って頂く、ということは、店側にとってある意味「必要なこと」だと思う。全ての消費者が常に冷静で、「絶対必要なもの」しか買わないとしたら、「消費」の伸びはないだろうし、経済が立ち行かなくなる。いかに、「衝動的」に買わせるか、また「買いたい気持ちになっていただくか」を考えることが、「売り上げ」を増やす最大のポイントになる。

だが、これを逆手にとって「商い」をしてきたのが、一部の呉服屋である。

呉服業界の「売り上げ最優先」の弊害はこれまで何度かお話したが、「展示会商法」などで問題になった「過量販売」は、「ローンやカード」を利用することで成りたっていたものだ。「現金取引」であるならば、そうそう物を買えるものではない。「ハンコ」一つで商いを成立させることが出来る、この「便利な手管」があればこそ、の手法だった。

呉服店側の人間が言うのも「おかしな話」だが、高額な(安物なのに高額のように装っている場合がある)商品を「一般の方」がそうそう「何枚も必要」とは思えない。それは「フォーマルモノ」であれ「カジュアルモノ」であれ、同じだ。

職業柄キモノを必要としている方や、趣味のある方なら、自分の望む品をいかに「安く」手に入れるかを考える。また、使えるものは長く使おうとする。(直しを怠らない)。それは、「賢い消費者」になろうとすることであり、モノの価値を見極める努力をすることだ。「安易」な買い物などはしないのだ。

 

「買わせよう」とする業者は、「手を替え、品を替え」いかに「感覚を麻痺させるか」を考える。それは、「冷静さ」を失わせることを目的にしたり、品物の本当の価値を見極められない多くの人の、「目を眩ませる」ことに商いの「主眼」を置いているのだ。

この商売の最大の問題点は、「消費者」がモノの値段や価値が非常に「わかりにくい」点にある。「キモノや帯」は高い、という意識が潜在的にあり、これを「逆手」にとって商いをする。消費者は「わからない」ことは「プロの専門家=呉服屋」に任せておくのが最善だと考える。ここに「落とし穴」があるのだ。実は「呉服屋=プロの専門家」という「公式」が当てはまらない現状がある。

「展示会」のすべてが「悪い」というつもりはない。それこそ、季節ごとに、「自分の仕入れた手持ちの品」を紹介しながら、自ら販売するような、「展示会」を開いている店がある。またテーマをきめて、普段お目にかかれないような織物の逸品を集めて開かれる素晴らしい「会」もある。

 

だが、「展示会」が「どんな展示会」なのか、普通の消費者は判断することができない。それは、「商品の質、価格」の知識や開催している「店」の知識を持っていないことに原因がある。

消費者が、最初は「見るだけ」と思って出掛けても、「買わせよう」とする仕掛けがあちこちに散りばめられている。過大なみやげ物や食事の提供などが一つの手管といえるが、何より、「物を買わずには帰れない」ような「会場内の雰囲気」作りを見ると、それが「どんな展示会」なのかある程度理解できよう。

まず、会場へ入ると、受付があり、「店の担当の者」がぴたりと張り付く。それと同時に「アドバイザー」と呼ばれ、「品物のお勧め役、案内役」の女性も張り付く。場合によれば、「商品を貸している問屋の社員」も張り付く。この時点で何人もの人に「張り付かれる」状態である。

商品知識があり、「わかっている方」などは、こんな人達は「うっとうしい」と思われ、「少し自由に見せて」などと、さりげなく「断り」を入れる。

だが、「一般の方には」自由に商品を見て歩くことが、ほとんど「不可能」であろう。会場内にいるうちは、何人もが「張り付いたまま」の状態である。私が、「どのような展示会か」を見極める最大のポイントと思うのは、ここだ。それは、店の人間、それは店主でも社員でもよいが、「自分で物が売れるか否か」と言う点である。

「人頼み」に「品物」を売ろうとする、という姿勢は、その店が「他人の褌で相撲を取っている」ということ、「商品知識や価値や適正価格を自ら知ろうとしない」証拠である。

八百屋や魚屋や肉屋なら、、品物の産地や、旬や、どのような料理に向き、どんな調理法があるのかや、無農薬で作られているのか否かなど、それこそ消費者に提供できる「あらゆる知識」を持って商売に励む。これは、あらゆる仕事にいえることだが、「売ろうとする品」の「正しい情報やその品の特徴」を消費者に理解して頂くことが、「モノを売る」第一歩である。

これを「人任せにする」とは考えられないことである。自分の店の「顧客」であればなおさらだ。その人の「好み」は「把握」していなければ、「商い」は出来ないと思えるのだが、なぜかその会場で「初めて会ったアドバイザーや問屋の社員」にお任せしてしまう。真に不思議なことだとしか言いようがない。

だから、「何も知らない、免疫のない」消費者はなおさら、、張り付いた人達により、「訳もわからぬまま」キモノを着せられ、帯を合わせられ、「お似合いですよ」などの「歯の浮くような言葉」に「惑わされつつ」、半ば「呆然」としながら、「商い」が進んでいくのだ。

取り囲んで、品物を勧める人達が語る「講釈」が正しいものなのかどうか、その品に付いている値段が適正であるのかどうかなど、ほとんど「不明」なまま事が運ばれてゆく。「わからない人」にとって、それが自分に「似つかわしいものかどうか」や「本当に必要なものなのかどうか」が「麻痺」した状態になってしまうこともあろう。

そして、「ダメ押し」は、ローンの分割で「1回あたりいくら」と計算し、いかにも「買い易い値段」になっているか提示することだ。総額50万の代金でも、24回払いならひと月の払いは、2万ほどだ。ここに「金銭感覚」をも「麻痺」させる仕掛けがある。本当に買いたい品であるかどうか、その「迷いを消す効果」が「ローン販売」にはあるような気がしてならない。

 

「展示会」というものに対して、極端な例を示したとは思わない。これを読んだ方に、少しでも「賢い消費者」となっていただく「契機」になってもらえれば、幸いだ。

最後に、私が考える、「賢い消費者になるための7か条」。

1・自分で商品知識と適正価格の知識を持つこと。

2・店側の言いなりにならぬこと。

3・自分でモノを売らぬ店員や店主の様子に注意すること。

4・いらないものははっきり断ること。

5・ローンやカード利用に惑わされないこと。

6・購入した品を本当に使うかどうか、冷静になること。

7・義理で展示会に行かないこと。

 

うちには「通い帳」というものを使っているお客様がいます。これは、買ったものや直した代金を、その都度「通い帳」という「帳面」に書き込んで行き、一と月に一度支払いに来て頂く(支払う額はお客様任せ)というものです。「請求」をすることはなく、あくまで「信頼関係」の上でこのようなやり取りが成り立つと思います。

またローンがない代わり、「延べ勘定」や「盆暮れ勘定」というのも、未だにあります。これは、何月までに支払うとか、毎月決まった額を入れていく(集金に行く)とか、盆か暮れまでには払うという約束事で支払いをしていただく勘定のことです。

相対で、自分の手で全てモノを売り、手入れをしていれば、自ずと「お客様」の事情を勘案しながら「商い」をしてゆくことになります。

「モノを売ること」も「モノを直すこと」も「代金を頂くこと」も「人任せ」というのでは、息の長い、本当の信頼関係をお客様と築くのは難しいと私は思います。一人で全てを行うことで、「責任の所在」を明らかにすることになるはずですから。

今日も、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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このブログに掲載されている品物は、全て、現在当店が扱っているものか、以前当店で扱ったものです。

松木 茂」プロフィール

呉服屋の仕事は時代に逆行している仕事だと思う。
利便性や効率や利潤優先を考えていたら本質を見失うことが多すぎるからだ。
手間をかけて作った品物をおすすめして、世代を越えて長く使って頂く。一点の品に20年も30年も関って、その都度手を入れて直して行く。これが基本なのだろう。
一人のお客様、一つの品物にゆっくり向き合いあわてず、丁寧に、時間をかけての「スローワーク」そんな毎日を少しずつ書いていこうと思っています。

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