バイク呉服屋の忙しい日々

今日の仕事から

週一回は模様替え

2013.06 14

週末の夕方に店のウインドや店舗内の模様替えをする。

ご多分にもれず、ここ甲府の中心商店街も昔の賑わいは見られない。空き店舗が目立ち、活性化対策に行政や商工会議所などが躍起になっているが、厳しい状況は変わらない。

私は、昔のように何もしなくても人が集まり、商売が出来ていた頃が「特別」だったと考えるべきだと思う。どこで店を構えようとも、「その店でなければ出来ない仕事」を持つことが出来れば商売は続けていける。大型店と差別化できるかどうかにこれからの個人経営の店はかかっているし、出来ることややらなければならないことは必ずあるはずだ。

人通りがあってもなくても、ウインドはその店の顔である。顔を放っておくというのは、店主が怠慢であることの象徴だといってよい。呉服屋であれば、旬のものを置き季節感を出すのが当然である。夏の間は、一年中振袖を飾っておく呉服屋と一目で差別化できるとてもよい季節でもある。

今日のウインド

上の画像 左から能登上布(細縞 墨色)、縦絽小紋(吹雪柄 藍消炭色)、紗八寸帯(鱗文様 薄浅黄色)、小千谷縮(小市松紋織 薄青磁色)、竺仙ゆかた(綿絽白地 朝顔柄)、(綿紬鼠地 雀の丸柄)、(玉虫 花の丸柄)、本筑四寸帯、竺仙麻帯

下の画像 竺仙ゆかた(さやま縮 鰹縞)、佐藤和次(織部花瓶・角皿・黒織部皿)

下手な画像のため、現実の色と離れているが、雰囲気だけは伝えられるかと思う。下の画像は店入り口にある小ウインド。薄物は色のバランスと撞木(キモノや帯を掛ける道具)の置き方で、表からすっきりさわやかに見せられるかどうか決まる。撞木の高さや右に置いた露草の位置も考えなければならない。

飾る前におよそイメージしておき、出すアイテムや色を決める。いざ飾ってみると思い通りにならないことがほとんどで、一回で決まることは少ない。何度やっても、何年やっても「店の顔」を作るのは難しい。

店内の小ウインド二点 

上の画像 明石縮(縞に波文様 蒼白色)、紗九寸帯(変わり亀甲 菜の花色)

下の画像 からむし八寸博多帯(格子に縞)

品物を見てわかっていただけるかと思うが、いわゆる「よそゆき=フォーマルモノ」はほとんど飾らない。薄物は特に、普段少しお洒落して出かけられる品をお見せしたい。絹、綿、麻など素材も多く、その着心地は異なる。値段も竺仙ゆかたや小千谷縮なら2万代~5万円代ほどであるし、明石縮や能登上布でも10万円代半ばだ。夏帯も10万円以下のものがほとんどである。

つまり、買いやすい値段で楽しめるもの、プレタのゆかたではなく少し本格的なものを気軽に楽しんでもらいたいというのが本旨である。専門店である限り、売れても売れなくても買い取って、置かなければならない商品がある。それが薄物だと思う。

ただ夏結城や夏大島、宮古上布や八重山上布など手を出しにくい価格の商品がある。本当はそういう品物もなくてはいけないと思うが、当店にそこまでの資力はない。まして地方都市の呉服屋なら、ある程度の値段の範囲内で、薄物の良さを多くの人達に知っていただくことを主眼に置くべきだと思う。

当店は問屋やメーカーから品物を借りて商売することはない。今ある店の品物は、全部自分の目で選んで買い取ったものだ。だからどの品物にも愛着があるし、消費者になるべく「求めやすい値段」で品物がお願いできるように心がけている。近いうちにこのテーマでお話しようと思っているが、「買い取った値段」と展示会やその他で「借りて商売する値段」とでは数倍の差があるのだ。

今はネットで商売している店が数多く見られるが、私はできるだけにその価格を見るようにしている。そこに付けられている値段はある程度参考になるからだ。竺仙のように売る値段(上代価格)を向こうから設定してくるものもある。これは呉服屋にいい加減な値段を付けさせないようにするもので、私は結構なことだと思う。竺仙の品物に自信と希少性があるからできることで、「適正価格」を設定することが業界の信用を得てゆくためにもこれから必要なことだ。

挿し色のあまり入らない竺仙のゆかた。

シンプルな「江戸好み」の「小粋」な柄ゆきが「私の好み」である。仕入れをしている者が一番嬉しいことは、自分好みで入れた品をお客様が気に入ってくださる時だ。「どんな時代になっても残したい品物」を見つけながら、これからもじっくり仕事をしてゆきたいものである。

 

このブログを始めるときにお話したように、お客様とのやりとりは必ず「対面」でするということは、変えられません。実際に現実の品物を手にとって生地の風合いや色合いをご覧になることがすべての始まりではないでしょうか?私が毎週悩みながら飾るウインドを見て、評価していただきたいと思います。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

                                             

 

 

 

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このブログに掲載されている品物は、全て、現在当店が扱っているものか、以前当店で扱ったものです。

松木 茂」プロフィール

呉服屋の仕事は時代に逆行している仕事だと思う。
利便性や効率や利潤優先を考えていたら本質を見失うことが多すぎるからだ。
手間をかけて作った品物をおすすめして、世代を越えて長く使って頂く。一点の品に20年も30年も関って、その都度手を入れて直して行く。これが基本なのだろう。
一人のお客様、一つの品物にゆっくり向き合いあわてず、丁寧に、時間をかけての「スローワーク」そんな毎日を少しずつ書いていこうと思っています。

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