バイク呉服屋の忙しい日々

今日の仕事から

呉服屋の道具・1 検針器

2013.05 28

「今日の仕事から」という「カテゴリー」の中で、最初は呉服屋が使う「道具」について話を進めてみたい。

今日は「検針器」について。何故最初に一般的になじみのない「検針器」を取り上げたかというと、実は今日「検針」をしたキモノから針が見つかったからである。和裁職人が縫いあがった品物を納品した時は、必ず「検針」を行う。人の手による仕事なので、どこで「縫い針」がキモノの中に紛れ込むかわからない。そのために「検針」はかかせない仕事である。

「針」が入っていることは大変めずらしいことである。頻度は二年に一度ほどで、だいたい400枚に一回程度と思われる。そのくらい職人は注意深く仕事をしているのであるが、「上手の手から水が漏れる」と言うことわざの通り、「万が一」ということがあるため、絶対に欠かせない「最終検査」なのだ。

上の二つの画像が「検針器」。この上にたとう紙に入れたキモノ、帯を乗せる。

「検針」している状態。この機械には「コンセント」が付いていて、「電気」を入れて「検針」する。「検針器」の上にコードが付いた「丸いもの」があるが、これが「お知らせブザー」になっていて、「針」が入っている時は大きな音が鳴り、知らせてくれる。

うちの「検針器」はもう40年ほど使い続けている「年代物」である。作った会社は上から二番目の画像を見ればわかるように、「Kett=ケット」という会社が製作したものだ。機械もかなり古くなっているので、壊れる可能性がある。将来修理をどうするかが問題になるだろう。私はこの「ケット」と言う会社はもう存在していないだろうと思っていた。それは「キモノ検針器」のような需要がさほどあるとも思えないものを作る会社が、今の時代生き残っていると思えなかったからだ。

そこで調べてみたところ、見事に想像は裏切られた。「ケット」の正式な会社名は「ケット科学研究所」という。今も営々と業務を続けている。大田区の馬込に本社が有り、大阪、札幌など全国に5ヶ所の営業所を持っている。

この会社は、「測定器」を作る会社なのだ。例えば「水分分析計」や「膜厚計」、「農業測定器」などがある。「粉」や「精米」の白度を測るものや「紙」、「そば」、「麦」などの水分を測り、分析するものだ。「検針器」のような、「鉄片、金属探知器」の製作も続けられている。納入先は「農業団体」、「食品業界」「薬品業界」など多岐にわたっている。

「検針器」もバージョンアップされているようだが、基本的な扱い方や機能はうちの機械とほとんど変わっていないようである。つまりは「スタンダード」な製品といえる。値段は15万円ほどでかなり高価なものだが、昔もこのくらいの金額だったようで、値段はあまり変わっていない。

「道具」というのは調べてみないとわからないもので、想像していたところと全く違う所で作られていたりする。「小さな町工場」で一人か二人の職人で細々と作っていたとの想像は見事に裏切られたのだ。ともあれ、これでうちの「検針器」の「メンテナンス」も大丈夫なことが確認できたが、一日としてなくてはならないものである。せいぜい大事にいたわりながら、使い続けていきたいと思う。

今回、「長く使う」という「コンセプト」は、その「商品」にとって「基本」なのだと改めて考えさせられました。「バイク」も「検針器」も「キモノ」もみんな同じで、よい仕事がしてあり長く使えるものこそが「よい品物」なのだと思います。

「使い捨て」や「その場限り」の「安さ」だけを追求していることが、むなしい競争をしているような気がしてなりません。使い続けることで生まれる「愛着」や「モノを大切に扱う心」が何より大事なことに思われるのですが・・・。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 

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このブログに掲載されている品物は、全て、現在当店が扱っているものか、以前当店で扱ったものです。

松木 茂」プロフィール

呉服屋の仕事は時代に逆行している仕事だと思う。
利便性や効率や利潤優先を考えていたら本質を見失うことが多すぎるからだ。
手間をかけて作った品物をおすすめして、世代を越えて長く使って頂く。一点の品に20年も30年も関って、その都度手を入れて直して行く。これが基本なのだろう。
一人のお客様、一つの品物にゆっくり向き合いあわてず、丁寧に、時間をかけての「スローワーク」そんな毎日を少しずつ書いていこうと思っています。

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