バイク呉服屋の忙しい日々

今日の仕事から

さて何を着るか、薄物を考える

2013.05 31

明日は6月1日、衣替えである。

当店もゆかたを始め、小千谷縮や明石縮などの夏織物、絽小紋、絽付下げなどの夏染物も飾り、単衣、夏の薄物へと模様替えをした。

何分、ひとりの作業のため、なかなか仕事が捗らないのだが、今日は夕方、片付けの最中にお客様が相談に見えたので、仕事を終えたのがかなり遅くなってしまった。

そのお客様の相談が今日のテーマ。

それは「7月7日の会社の同僚の結婚式に何を着たらよいのか?」という相談。うちの店は30~40歳代の方が割とお見えになるが、その方もその年代のキャリアウーマンの方だ。「結婚式」なので、着てゆくアイテムは「無地」「付下げ」「訪問着」あたりがまず無難であるが、問題は「薄物=絽や紗」でなくて「単衣」でもよいかということである。

今までの慣習からすれば、7月に入れば「絽か紗」のいわゆる「薄物」を使う。「単衣」は6月と9月のお召し物になる。そのお客様は「単衣」しか持っていないので、7月にそれを使うのは「不自然で間違っていること」にならないかという心配をしている。使う予定のアイテムは「単衣の訪問着」で合わせる帯は「白地の紗袋帯」だ。

お客様は、今後あまり使う予定のない「絽付下げや絽訪問着」を買うことを躊躇していて、なるべくなら手持ちの「単衣」のもので済ませたいという希望である。

さて私の「回答」である。私は「単衣の訪問着」でもよいと答えた。わざわざそのためだけに「絽」のものを買うのはもったいない。しかも合わせる帯は「紗袋帯」なので、「薄物」らしさは出せるように思う。なにも「教条的」に7月は「絽か紗」にこだわる必要はないのではないだろうか?読んでいる方に「オマエは商売人ではないな」とお叱りを受けるかも知れないが、「持っているもの」で済むならそれが一番だ。

キモノを日常に着ているうちのお客様たちに聞くと、「単衣」や「薄物」をお召しになり始める時期は千差万別である。ある方は、「5月の連休明け」になったら「裏付き=袷」なんか暑くて着てられないから「単衣」になってしまうし、ある方は「薄物の絽や紗は6月下旬から9月半ばまで着ている」と言う。

つまりは「臨機応変」が最善ではないだろうか。「きちんと着るものの時期を守って着なければ」と考える方はそれはそれでよい。「茶道」の方たちはこのことをきちんと守られることが多いが、一般の方は、多少の融通やゆるみがあってよいと思う。すでに「真夏の結婚式」に「袷の黒留袖」を着ている方がほとんどで、「絽の留袖」など最近ではほとんどお目にかからないような現状もあるのだ。

ただ私は「袷」を「真夏に着る」(留袖など着る場合を除き)のはどうかなとも思う。「単衣」は5月半ば~7月前半と9月~10月前半、「薄物」は6月後半~9月半ば」そのくらいに考えたら如何だろうか?重なっている時期はどちらでもよく、着る日の天候や気温、着てゆく場所に応じて選べばよいと思う。

この国も「温暖化」の影響で、以前に比べて「夏」が長くなっていると、ここ数年強く感じられる。「キモノ」の「慣習」も少し見直されてもよいのではないだろうか。

「単衣」や「薄物」にはそれにふさわしい色や花、文様があります。また素材も「絹」「綿」「麻」など色々なものがあり、「着心地」もそれぞれに異なるという「夏」ならではの楽しみ方もあります。「涼やかに見える夏のお召し物」に目をとめてみて下さい。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

 

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このブログに掲載されている品物は、全て、現在当店が扱っているものか、以前当店で扱ったものです。

松木 茂」プロフィール

呉服屋の仕事は時代に逆行している仕事だと思う。
利便性や効率や利潤優先を考えていたら本質を見失うことが多すぎるからだ。
手間をかけて作った品物をおすすめして、世代を越えて長く使って頂く。一点の品に20年も30年も関って、その都度手を入れて直して行く。これが基本なのだろう。
一人のお客様、一つの品物にゆっくり向き合いあわてず、丁寧に、時間をかけての「スローワーク」そんな毎日を少しずつ書いていこうと思っています。

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